物理探査は、物理的な手法により地下情報(定量的な物理量)を推定する、いわば「地下を視る目」の役割を果たす技術です。当研究室では、石油・天然ガス探査に主力として使用される弾性波探査技術に関する研究を行っています。人工的に励起した弾性波を地下に送り込むことにより観測される弾性波形データから多様な物性情報を引き出す解析技術を開発するとともに(文献1)、推測された物性情報の妥当性を室内実験(文献2)や物理モデル(文献3)に基づいて科学的に検証するスタイルをとっています。これまではメタンハイドレートや地熱資源などの地球資源などを探査対象としてきましたが、今後は学融合的分野の創出にも挑戦していきます。 地球資源の探査に関する研究をしていきますと、明らかに対象が大深度化、複雑化、小規模化したものに移行していくことがわかります。これは我々の経済原理が探査・開発しやすいエネルギー資源から探査・開発を行っているためです。技術革新によりこれまで探査・開発できなかったものが可能になりますが、投入するエネルギーに対する回収エネルギーの比(エネルギー収支比)が低下しています。このようなエネルギー収支比の低下はQoL (Quality of Life)の低下を招くばかりでなく環境へのインパクトも大きくなります。生態系におけるエネルギー獲得・フローはお手本的なシステムを構成しており、生態系に学ぶエネルギー資源論に基づいて、エネルギーの獲得・利用から経済までを考えていきたいと思っています。具体的には、エネルギー収支比の評価(文献4)やエネルギー収支比とQoLの関係を調査(文献5)してきました。
[文献] 1) Matsushima, J., M.Y. Ali, F. Bouchaala, 2016, Seismic attenuation estimation from zero-offset VSP data using seismic interferometry, Geophysical Journal International, vol. 204, 1288-1307. 2) Matsushima, J., Suzuki, M., Kato, Y., and Rokugawa, S., 2016, Ultrasonic measurements of attenuation and velocity of compressional and shear wave in partially frozen unconsolidated sediment and synthetic porous rock, Geophysics, vol.81, no.2, pp. D141–D153. 3) Zhan, L. and J. Matsushima, 2018, Frequency-dependent P-wave attenuation in hydrate-bearing sediments: a rock physics study at Nankai Trough, Japan, Geophysical Journal International, vol. 214,1961–1985. 4) Yaritani, H. and Matsushima, J., 2014, Analysis of the energy balance of shale gas development, Energies, vol. 7(4), 2207-2227. 5) Liu, B. and J. Matsushima, 2019, Annual changes in energy quality and quality of life: a cross-national study of 29 OECD and 37 non-OECD countries, Energy Reports, vol. 5, 1354-1364. |