地圏の特性を活用して、できるだけ環境負荷が少なく持続可能なエネルギーシステムの構築に貢献するための研究を行っている。地熱や地中熱利用、二酸化炭素地中貯留などの人間活動と自然環境の相互作用のモデル化や、適切な監視・管理手法の確立を目指した研究をしている。具体的なテーマは以下のようである。 1) 広域地下水流動システム中における詳細モデリング技術 自然環境と人間活動の相互作用をモデル化するためには、広域的な環境スケールでの現象と、局所的な人工物の施工スケールで発生する現象の両方を扱う必要があることが多い。注目すべき物理プロセスや要求される解像度・精度などが大きく異なるモデルを適切に連結し、効率的にモデル化する手法の開発を行っている(文献1)。 2) 自然に近い条件における原位置地層物性の評価技術 地下を適切に活用するためには、まずその性質を定量的に評価することが必要である。大気圧変動や潮位変動など、自然に発生している信号を受動的に観測して解析することで、自然に近い状態における地下の物理的性質を推定する技術の研究を行っている(文献2)。 3) 多相の間隙流体を含む多孔質体の力学 地中の熱や間隙流体圧が変化すると、それに伴って地層も変形する。地熱発電における水-水蒸気系や、二酸化炭素地中貯留における水-二酸化炭素系など、多相の流体が存在する場合にも地層の変形が評価可能となるように、変形理論の構築を行っている(文献3)。 また、その理論に基づいた数値シミュレーションと地表面変動モニタリングを組み合わせ、地下の状態を地表の情報からも推定可能とし、より効果的な監視・管理手法の確立へとつなげるべく研究を行っている。
[文献] 1) Aichi M. Coupled Groundwater Flow/ Deformation Modelling for Predicting Land Subsidence. In Groundwater Management in Asian Cities: Technology and Policy for Sustainability, Takizawa S (eds.), Springer-Verlag: Tokyo, pp105-124 (Chap.5), 2008. 2) 愛知正温, 塩苅恵, 徳永朋祥, 2011, 地下水面の潮汐応答に関する解析解の導出と伊豆諸島新島における原位置水理特性評価, 地下水学会誌, 53(3), 249-265. 3) Aichi M, Tokunaga T, 2012, Material coefficients of multiphase thermoporoelasticity for anisotropic micro-heterogeneous porous media. Int. J. Solid. Struct., 49, 3388-3396. |