環境調和型溶媒として注目されている超臨界流体の工学的利用について研究を行っている。超臨界流体とは、物質固有の臨界点を超える温度圧力条件の流体であり、単一の物質でも操作条件によって物性を大きく変化させることができる。特に超臨界水は、温度や圧力の操作によってイオン積や誘電率が幅広く変化するため、無機反応に適したイオン性の雰囲気から、無極性溶媒に匹敵する高い有機物溶解性を実現する雰囲気まで、目的に応じて反応場を選択することが可能となる。このような特徴を活かし、安価で無毒である水を従来の有機溶媒に替わる反応場として利用することによって、新しい環境負荷低減技術の開発を目指している。 研究対象は、超臨界水酸化反応と呼ばれる有害廃棄物の分解(文献1)や、固体触媒を用いた有機合成(文献2)、ナノ粒子やポリマーなどの無機材料合成(文献3)など、多岐にわたる。これらの各分野において、化学反応速度論や反応工学をベースとした反応の設計、解析、制御を行うことによって、超臨界流体中の化学反応に関する基礎的研究から、新しい工学技術の開拓まで、幅広く研究を進めている。
[文献] 1)Li Hong and Yoshito Oshima, “Elementary Reaction Mechanism of Methylamine Oxidation in Supercritical Water”, Industrial & Engineering Chemistry Research, 44, 8756-8764 (2005). 2)Kengo Tomita and Yoshito Oshima, "Stability of Manganese Oxide in Catalytic Supercritical Water Oxidation of Phenol", Industrial & Engineering Chemistry Research, 43, 7740-7743 (2004). 3) Junichi Otsu and Yoshito Oshima, "New Approaches to the Preparation of Metal or Metal Oxide Particles on the Surface of Porous Materials Using Supercritical Water: Development of Supercritical Water Impregnation Method", Journal of Supercritical Fluids, 33(1), 61-67 (2005). |