専攻概要

専攻長挨拶

環境システム学への誘い

生態系におけるエネルギーの獲得と流れは全体として興味深いシステムを形成しています。システムを構成する各生物個体はエネルギーの獲得と消費のバランスを最適化するために、自身の性能が最大限発揮できる環境を選択し、その環境に適合することに努めています。その過程において、環境に上手に適合できた種が生存し、そうでない種が絶滅するという、所謂自然淘汰が行われます。生態系全体におけるエネルギーの流れは速すぎず遅すぎず、エネルギー効率が最大になるように程良い流れを作り出していますが(道徳的な行動規範である「中庸」に通じるものがあります)、その流れを制御しているのが自然淘汰の仕組みであるとも考えられています。つまり、人間の世界で例えますと、各人が自分の強みを見いだし、その強みを活かせる環境において他の人と切磋琢磨することを通して、全体として効率の良いコミュニティ・社会を形成できるということでしょうか。

環境システム学専攻では、人間活動に伴う物質とエネルギーの流れ、および自然界における物質循環を把握し、それらの相互干渉を明らかにすることで環境システムを深く理解し、最終的には環境調和型社会の創成を目指しています。そのための手段として、システムを構成する各要素の性質を明らかにして、各要素間の連携メカニズムを解明するシステム的アプローチが重要になってきます。

昨今の世界情勢を見ますと、先端技術が先導してきた経済成長に少し翳りが見え始めてきました。とりわけ先進国では中間所得層が縮小し、格差が拡大するばかりでなく貧困化が顕在してきています。経済・社会のあり方は今後方向性を変えざるを得ない状況に直面することが予想されますが、現状それらの青写真は存在しません。このような状況の中、当専攻が標榜しております環境調和型社会創成への取り組みは今後その重要性を増していくものと思います。環境システム学を総合科学として確立し、次の新しい時代を切り拓く意欲のある方に是非当専攻に加わっていただきたいと思います。

2021年度 環境システム学専攻 専攻長
松島 潤

専攻概要

環境システム学専攻とは

人類の活動に伴う膨大な量の人工物生産・廃棄物排出や地表・地下・海域の開発に伴う環境改変は、大気・水・土壌・地殻・生態系からなる自然界に大きな影響を与えているのみならず、ヒト・社会を含む環境システム全体に様々な問題を発生させています。

これらの問題に対峙し、持続可能な将来を切り開くためのひとつの重要なアプローチとして、環境システムにおける物質とエネルギーの流れを適切に把握・評価し、システムを構成する要素間の相互作用を明らかにすることが考えられます。また、科学技術に基づいたシステムの理解とそこから導き出される問題解決のための要素技術・それらを統合したアプローチに加え、経済・国際協調・政策といった観点をも融合した問題解決手法の構築と提示が強く望まれています。そこでは、リスクや安全という概念に基づいた十分な検討を行うことも必要です。

環境システム学専攻では、人間 - 自然系としての環境システムを構成する要素間の相互作用や関係性について把握し、その理解に基づく環境システムモデルの構築による問題の所在の明確化と解決方法・制御の可能性を探り、さらに、環境調和型社会のデザインとその実現を目指して教育・研究を行っています。

環境システム学が扱う領域

自然界ではそれを構成する大気圏・水圏・地圏と生物圏の間で物質やエネルギーのやり取りが行なわれています。我々人間社会は自然界から物質やエネルギーを採取し さまざまな人工物を作り出し、廃棄物の排出や開発による影響を自然界に与えています。環境システム学はこのような物質とエネルギーの流れの把握と、技術・経済・制度・法律・教育・倫理・リスク・安全など、さまざまな側面から社会システムのあり方を包括的に扱うことで、環境問題へのアプローチを試みています。

環境システム学による環境システムモデルの構築と環境調和型社会の創成

環境システム学は、人間社会と自然のサブシステムから構成される環境システムモデルを構築し、このような人間界と自然界の相互関係を把握することによって環境システムモデルに対する技術や政策の導入などによるシステムの応答を分析します。そして、制御・適用などのアプローチを組み合わせて持続可能な環境調和型社会をデザインすることを目指しています。

分野構成

環境システム学専攻を構成する分野

現代における複雑に関連しあう様々な課題に対応するためには、個別の専門分野の関係する従来型のアプローチだけでなく、対象を多面的な視点から捉えることが不可欠です。そこで環境システム学専攻では、ここに示していますように多様で多彩な研究分野で構成されています。多様な専門分野を背景に持つ教員が連携して、環境問題を解決し持続可能な社会を実現するために、俯瞰的視野に立った戦略的かつ柔軟に分析や議論ができる体制を整えております。

研究分野・教員情報は「研究室一覧」へ

連携先

環境システム学専攻では、国内外の様々な組織と連携しながら研究を行っています。

日本国内

国立環境研究所(連携講座:循環型社会創成学分野

東京大学大学院新領域創成科学研究科と国立環境研究所は、相互に連携し、東京大学の大学院博士前期課程・博士後期課程における教育研究活動の一層の充実を図るとともに、国立環境研究所の研究活動を推進し、その成果・普及を促進することによりわが国における環境学の発展に寄与するため、2005年10月14日に協定書を締結しました。国立環境研究所は循環型社会創成分野の研究において顕著な実績・ポテンシャルと著名な研究者を有しており、本連携講座は、環境システム学専攻と国立環境研究所が連携することにより、循環型社会創成学分野における研究と教育の発展を促進することを目指しています。

日本国外

インペリアル・カレッジ・ロンドン(交流協定)

本プログラムは、環境システム学専攻及び海洋技術環境学専攻と、英国屈指の理系専門大学であるインペリアル・カレッジ・ロンドンの化学工学専攻との間の交換留学プログラムです。2009年度から交流を開始しまして、毎年数名の修士学生を派遣したり受け入れたりしています。一般的な環境問題とその予想される影響、現在考えられている対策技術とその効果について広く学び、国による技術の位置付け、それを利用する政策決定プロセス、社会受容性などの差異を、それぞれの国において講義・演習を通して理解することで、環境問題に関する国際交渉を担う将来のエンジニアや技術政策立案者の育成へとつなげることを目指しています。

詳細は「海外派遣プログラム」へ